ネコの小脳片葉中間ゾーンから単一プルキンエ細胞の活動を記録し、急速眼球運動(サッケード)の時の単純スパイク発射応答を調べた。中間ゾーンの細胞は、5°/secの水平・垂直性視運動刺激を行い、記録したプルキンエ細胞の複雑スパイクの応答から、水平性で記録と対側向きの視覚刺激に活動を増加し、同側向きで減少することにより同定した。サッケードは明所下において光スポットまたは音刺激で誘発した。 明所下におけるサッケードに対する単純スパイク応答には、(1)記録側と同側、対側いずれの向きのサッケードでも一過性の活動増加がみられるが、同側向きに対する反応が大きいもの、(2)(1)と同様に、両方向のサッケードに対して活動増加を示すが、対側向きに対する反応の方が大きいもの、(3)同側向きのサッケードで一過性の活動減少を示し、対側向きでは発射活動の変化を示さないか、わずかな増加を示すもの、(4)対側向きのサッケードで一過性の活動減少を示し同側向きでは反応しないか、わずかな増加を示すもの、という大きく4つのパターンが認められた。(1)、(2)のタイプにみられる強い活動増加はサッケードの開始にほぼ一致してみられた。また活動変化の時間経過をみると眼球速度の時間経過にほぼ一致して立ち上がるが、減衰の時間経過はサッケードの持続時間よりも長く、サッケード終了後徐々に自発発射頻度レベルに戻る傾向がみられた。(3)、(4)のタイプにみられる活動減少の時間経過は(1)、(2)にみられる増加の時間経過と類似していた。 小脳片葉中間ゾーンの活動増加によって、増加側へ眼球が偏位するというこれまでの報告と考えあわせると、記録側へのサッケードでの活動増加はサッケードを加速し、反対側へのサッケードでの増加は減速する方向に働くことが示唆された。
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