研究概要 |
本研究では,シリアンハムスターに高Chol(コレステロール)食,または副腎皮質ホルモンを大量投与して高脂質血症を作出し,食肉類を終宿主とするテニア科条虫のハムスター体内での感染性・発育を観察する。最終的には,ハムスターを用いた食肉類寄生性条虫の実験室内代替終宿主モデルを開発することを目的とする。今年度は,ハムスター(5週齢,雄)を,高Chol食(0.3%)給与群,PTBA(ブチル酢酸プレドニゾロン)皮下投与(4mg/匹)群,高Chol食給与とPTBA皮下投与の両処置群,PTBA経口投与(4mg/匹)群,対照群に分け(各群4匹),各処置によるハムスターの体重および血液生化学的性状(総コレステロール(Tc),トリグリセライド(TG))の変化を調べた。実験期間は28日で,高Chol食は連日給与,PTBAは0,3,6,9,12,14,18,21,24日目に投与した。ハムスターは0,4,7,10,15,18,21,24,28日目に体重測定し,採血して血液生化学分析装置で測定した。体重は高Chol食給与群と対照群では順調に増加したが,PTBA皮下投与群と高Chol食+PTBA皮下投与群では10日目以降はほぼ横ばいであった。PTBA経口投与群は中程度の増加であった。血漿TCはPTBA経口投与群と対照群では実験期間中ほとんど変わらず139〜195mg/dlであったが,高Chol食給与群とPTBA皮下投与群では28日目には293〜375mg/dlに上昇しており,高Chol食+PTBA皮下投与群では400mg/dlを越えていた。血漿TGは測定値にかなり変異があったが,高Chol食+PTBA皮下投与群と対照群では増加する傾向がみられた。大量のPTBA皮下投与はハムスターの発育に悪影響があるが血漿TCの増加に効果があり,高Chol食給与により更なる高Chol血症を作出することができた。
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