研究概要 |
今年度はPNP14ファミリータンパク質の生体内での役割を明らかにすることを目的として、PNP14遺伝子およびシヌクレイン(SYN)遺伝子ノックアウトマウスの作製を進めると同時に昨年度作製したカルモジュリンキナーゼIIプロモータ-の支配下で遺伝子発現が制御されるPNP14遺伝子およびシヌクレイン遺伝子トランスジェニック(Tg)マウスの解析を行った。これらのTgマウスを各特異抗体を用いて免疫組織学的解析したところ、PNP14,SYNのいずれのTgマウスも野生型マウスと比較して大脳皮質、海馬のCA1からCA3領域、嗅球の糸球状シナプス複合体層および内顆粒層、小脳において各タンパク質の発現量の増加が認められた。さらにイムノブロット解析でも同様の結果が得られた。しかし、形態学的な相違を検討したところ、光学顕微鏡レベルでの観察では組織に異常は見られなかった。 次に本研究で作製したSYNTgマウスを用いてSYNの過剰発現が脳神経系において他の遺伝子の発現量に与える影響を調べるために、DNAアレイで解析した。その結果、SYNTgマウスの大脳では野生型マウスの大脳と比較して、軸索輸送を担っているタンパク質や長期増強(LTP)形成に関与する遺伝子の発現量が減少し、一方数種のアポトーシスを阻害するタンパク質の遺伝子発現が顕著に増加していた。これらの結果からSYN遺伝子が神経細胞のアポト-シスさらにはアルツハイマー病やパーキンソン病などの痴呆を伴う神経疾患に関与している可能性が示唆された。今後、PNP14Tgマウスについても同様にDNAアレイを用い解析する予定である。
|