本研究は、生体UMS技術をUHF帯における生体組織の基礎音響特性の測定に適用したものである。 (1)連続波を用いた音響特性測定法の導入: 本研究では、試料の音響特性の周波数依存性を正確に測定するため、バースト状のパルス超音波を用いる。超高周波帯では、試料における伝搬減衰が大きくなるため、試料の厚さを薄くしなければならない。その結果、試料内部における多重反射波を時間的に分離できなくなる。そこで、多重反射波の干渉出力の周波数特性曲線から、試料の音響パラメータを決定する方法を導入した。即ち、測定曲線に最もよく合う数値計算曲線を求める方法である。 綿実油に対して、この手法を用いて200MHz帯の超音波で音響特性を測定した。測定曲線と数値計算曲線の差を最小2乗法により表すことで、客観的に最適な数値計算曲線を求めることができた。この連続波法は、UHF帯の生態組織の音響特性測定に有力な測定手法である。 (2)連続波法による生体組織の音響特性測定: 連続波法を用いて200MHz帯における、豚の肝臓の反射係数の周波数特性を測定することにより、減衰係数、音速、音響インピーダンス、密度を決定した。パルス反射を用いて測定した文献値とよく合っており、UHF帯における生体組織の音響特性測定につながる技術が実現できた。 (3)生体高分子溶液の音響特性測定: 生体組織の基礎音響特性を明らかにするため、生体高分子溶液の音響特性を測定した。生体高分子として比較的構造が簡単なデキストラン水溶液をとりあげ、70〜400MHzの超音波を用いて、5%〜20%の範囲で濃度依存性を、10^4〜2x10^6の範囲で分子量依存性を測定し、音響特性の濃度依存性・分子量依存性をとらえることができた。
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