本研究では、再建したい動作のための刺激データをあらかじめ用意しておくのではなく、患者の意志に応じて、実時間的に刺激データを生成して任意の動作を実現する方法を研究する。まず、上肢の運動機能再建に不可欠な“リーチング"に着目し、障害者がFESによって自由なリーチング動作を再建する事の可能なシステムの構築を目的として研究を行った。また、対麻痺者がシステム操作を意識しないでさまざまな条件下での歩行を可能にするFESシステムのためのインターフェイスについても研究を行った。今年度は、これらの研究に関して、以下の成果を得た。 1. リーチングを行うための患者の意志を、“手を伸ばすための目標位置(例えば、コップの位置)の三次元座標"として検出するセンサシステムとして、ここでは、重度四肢麻痺者への適用を想定し、残存する頭部の随意動作から目標位置の三次元座標を検出する手法を採用し、三次元位置測定装置およびレーザポインタからなる目標位置検出装置を試作した。 2. 上記の目標位置検出装置により検出した目標位置の三次元座標から、リーチング動作を行なう際の手先位置の目標軌道を生成する方法として、健常者の三次元空間内でのリーチング動作を解析し、その動作軌跡の近似を利用する方法を提案した。 3. さまざまな条件下での対片麻痺者の歩行再建を自由に行えるFESシステムの実現を目指して、加速度センサにより歩行状態を識別することの可能性を検討した。その結果、1名の健常被験者で、平地方向、右折・左折を含む平地歩行、階段昇り、階段降りを3軸加速度センサにより識別可能であることが示唆された。
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