研究概要 |
注視点だけでなく,目の遠近調節を同時に非接触で計測できる装置の開発をめざして研究を行った.本年は,主に遠近調節測定法について研究した.遠近調節測定(屈折率)の基本としたのは,Howlandの方法であった.Howlandは,カメラの前に光源を置きレンズの前半分を遮蔽した.これによって得られた瞳孔像に現れる明るい部分の幅と瞳孔径から目の屈折率を決定する理論を展開し,さらに人工眼球を用いて,理論を実験的に検証した.しかし,彼は目の像を写真に撮りマニュアルで測定した.彼の方法を用いて,実時間画像処理により屈折率を測定するには,写真をビデオに置き換えるだけでは無理があった.なぜならば,瞳孔中に現れる明るい部分と残りの暗い部分の境界が明確でないからであった.そこで,本研究では,カメラ前の遮蔽面を左右交互にビデオレートで切り替え,それによって得た2枚の画像を差分し,瞳孔以外の瞼などの背景部を消去し,瞳孔部を検出する方法を考案した.その上で,差分瞳孔画像の最大輝度と最小輝度の4等分線を求め,1番目と3番目の等分線を閾値にし,それらと差分瞳孔画像の輝度分布が交叉する範囲の合計の長さを新パラメータとして定義した.今年度は,人工眼球を用いて静止画像を用いて実験を行った.その結果,新パラメータは,Howland方式の瞳孔中の明るい部分の幅と良く一致した.新パラメータは実時間で簡単に精度良く検出できると予想でき,今後の実時間遠近調節計測装置の開発が期待される.なお,実時間注視点検出に関しては,すでに実時間処理ができるようになっている,それとの一体化により近い将来遠近調節と注視点の同時計測が可能となるものと考えられる.
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