研究概要 |
本年度は実施計画時のスケジュールに従い,「in vitro 日本白色家兎屈筋鍵と鍵鞘間の摩擦試験におけるリン脂質リポソームの潤滑性評価」を行った. 実験に先立ち,新しいコンセプトに基づいた試験機の提案と検証を行った.日本白色家兎の後肢第3趾から屈筋鍵を基節骨とプーリーを温存するように摘出し,対象とした.屈筋鍵の両端を歪みゲージを付した金属板に固定し,予張力を与えた状態でプーリー内を滑動するシステムに,プーリー外部からステンレス丸棒を介して荷重を与え,摩擦力を測定した.本試験機は従来の手法と比べ,摩擦に占めるヒステリシスロスの影響を最小限に抑え,癒着が生じやすいと予想される鍵/骨滑走面の摩擦が考慮される等の特徴を有する.摩擦過程における静止摩擦と動摩擦の区別や,荷重および予荷重時間依存性を確認し,摩擦モードの同定を行った. リン脂質リポソームの効果に関しては,界面活性剤等を利用した表面処理を利用し,境界潤滑能の低下した相対摩擦面間において,ジパルミトイルフォスファチジルコリンリポソームの生理的濃度の潤滑液添加により,潤滑性を有する表面吸着膜の再形成を実験的に確認した.鍵損傷後は健常時よりも潤滑条件は過酷となり境界潤滑モードへの依存力高くなるため,従来用いられているヒアルロン酸塩水溶液にリン脂質リポソームを添加することにより,境界潤滑性を向上させる界面を形成し,癒着防止に効果を発揮することが期待される. 来年度以降,実施計画に記したように「in vivo屈筋鍵損傷モデル家兎の修復過程の癒着防止に及ぼすリン脂質リポソームの投与効果」を検討する.
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