多電子酸化還元可能なポルフィリン複核錯体の合成を試みた。ポルフィリン錯体には申請者が合成しSODと同程度のO_2消去能(2O_2^-+2H^+→H_2O_2+O_2:1電子移動)を示したマンガンポルフィリン錯体(MnP)を用いた。さらに、1段階2電子移動(2H_2O_2-H_2O+O_2)を生起させるためMnP複核錯体を合成した。今回は、先ず多電子反応機構を明らかにするため、合成が確実なイオン結合型Mnポルフィリン複核錯体を合成した。H_2O_2の反応サイトの構築と酸化還元電位の制御が多電子移動の鍵となるため、Mn-Mn間距離、ポルフィリン環歪、置換基等の分子構造を半経験的分子軌道法より計算した。多電子移動および酸化還元電位は回転リングディスク電極装置より解析するため、そのディスク電極(特注)の設計及び実験を行い、測定法の妥当性を明らかにした。さらに、O_2^-・H_2O_2不均化速度はStopped Flow装置を用い測定し、酵素活性(kcat)も解析、その反応メカニズムを考察した。 以上の知見を基に、次年度は迅速な多電子酸化還元反応が可能な新規ポルフィリン複核錯体を合成する。
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