【目的】心筋虚血の局在性と関連深い心臓の局所メカニカルストレスを理解するために、拍動心における局所レベルでの心筋ストレイン(ひずみ)の計測し、その解析を行い、心筋マイクロレベルにおける心筋マイクロメカニクスの評価を行った。【方法】麻酔開胸犬を対象に、拍動する左心室自由壁に心外膜を穿通させたマイクロホールを作製した(先端直径30μm、先端角度25度のマイクロピペットを使用)。マイクロホールに直径15μmの可視光対応の微細粒子計測用光マーカを埋め込み、高速度カメラ内蔵CCD生体顕微鏡を用いて、計測用光マーカの変位量を測定し、心筋のマイクロストレインの観察・計測を行った。観察画像から任意に抽出した5点の計測用光マーカについて時間経過毎の座標点を求め、二次元マトリックスの変換係数を求めるアフィン変換法を用いて心筋のマイクロストレインの歪み波形を得た。【結果】心電図上のR波の開始、すなわち電気的収縮の開始とともに心筋の収縮が開始し、その後、収縮早期のうちに最大短縮(4.6±2.2%)に達した。すなわち、心筋の微小領域の変形は、左心室の圧の駆動に先行する前駆出期に生じた。この電気的収縮とほぼ同時に始まる収縮早期におけるマイクロストレインの最大短縮は、冠微小血管床にメカニカルストレスとして作用し、冠動脈の特徴的な血液の流れである収縮期早期の逆流の成因メカニズムを説明するものであると考えられた。微細粒子を用いた局所心筋マイクロストレインの解析は、心筋のマイクロメカニクスの解析に有用であることが示差された。
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