本研究は、保育・教育場面において、日本語非母語児を含んだ異なる年齢集団の談話を観察し、言語的多数者と言語的少数者の間の非対称性がどのような状況でどのような形で生成されるものであるのか明らかにすることを目指している。このため本年度は保育園年少児集団と小学校高学年集団において参与調査を行った。また、必要に応じて関連資料の収集が行われた。 保育園におけるフィールドリサーチは既に昨年度観察を行った日本語非母語児を含む乳幼児集団が進級した年少(2・3歳児)集団を対象に行われた。観察者は新たに集団が形成された四月から月に一二度の頻度で参与観察を行った。主要な観察場面は、子供達の自由遊び場面と保母に指導された集団保育場面である。本年度は特に、年中に向けた保育者による集団指導と子ども達の発達との関係に焦点があてられた。基礎資料としてフィールドノーツが書かれた他、いくつかの場面に関してビデオ記録がとられた。 小学校での観察は調査対象校の特定に時間がかかったことから、秋から開始され、月に約一度のペースで行われた。調査対象となった小学校は複式学級三クラスで構成されている極小さな僻地指定を受けている学校である。近隣に日系ブラジル人を受け入れる工場があることから、これまで複数のブラジル人の子どもが通っていた実績がある。今回観察したのは、四年と五年に配属された女子と男子の授業である。参与者は授業と休み時間、給食や掃除時間に応じてビデオ記録をとりながら、参与観察を行った。観察のはじめは、二人は日本語専属教師によって「取り出し」授業の対応を受けていたが、三学期からは「親クラス」へ配属され、日本語母語児と同じ授業カリキュラムをこなすことになった。分析は、その「取り出し授業」、「親クラスでの授業」それぞれに対してなされた。 これらの調査は来年度も継続されると同時に、経過報告が研究会、学会でなされる予定である。
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