本研究は、言語学・認知科学・社会心理学にまたがって研究が展開されてきた<ディスコース(discourse 談話)>の研究とディスクール社会理論から発達し、人文科学や社会科学の領域で世界に広まった<ディスクール(discours)>の研究の二つの系譜の境界に問題領域を設定し、<社会のディスクール分析>の新たな理論的・方法的可能性を拓く試みである。研究完成年度にあたる平成11年度は、とくに、ディスクールの社会理論の最大の理論家であるミシェル・フーコーの理論に関する研究成果を、筑摩書房刊行の『ミシェル・フーコー思考集成』全十巻の責任編集と刊行(現在までのところ第5巻まで刊行)として公表することができた。さらに、メディアテクストにおける、ディスクールの社会的制度性と、談話分析が析出する言語活動のミクロな認知意味論的レヴェルとの関連性を理論化し総合する作業は、東大出版会刊行予定のシリーズ『言語態』の第一巻『言語態の問い』の責任編集と執筆という形で公表が確実なものとなった。また。メディア・テクストの研究の成果の一部は、リヨンで行なわれた「複数のモダニティ」国際シンポジウムにおいて発表された。また、院生の協力をえて自然言語における談話や身体言語の研究をすすめるとともに、そのような記号能力がテレビ等の身体言語にどのように言説制度化されているかを研究した。その成果は「社会の言語態」に関する総合的研究として刊行される予定である。
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