研究概要 |
2歳から3歳までの家庭での自然な会話場面の分析を通じ,談話の能力の発達過程と,その際の家族からの言語入力の役割を分析することが本研究の目的であった。3年次にわたる研究の第2年次である本年は,前年度まで収集した発話データ(2歳児7名について,2歳の誕生日から3ヶ月おきに3歳半まで計7回にわたって保育園からの帰宅から就寝までの,対象児と家族との間のすべての発話を記録したもの)をコンピュータで分析するため,トランスクリプトファイルの作成を行った。トランスクリプトファイルの作成に関しては,CHILDES(MacWhinney&Snow,1990;大島&MacWhinney,1995)に基づくJCHATシステムに依拠して行った。これにより,ひとり1回あたり2時間半分,合計平均17.5時間分の会話の記録についてトランスクリプトデータが作られた。 さらに本年度は各幼児のそれぞれの時期ごとの平均発話長(MLU)および,発話ターンあたりの平均発話数(MLT)を算出した。また,生活場面による違いを分析するため,保育園から帰宅するまで,夕食まで,夕食,食後,入浴,入浴後就寝までの6つに区分し,それぞれの場面でのMLU,MLTを算出した。子どもの統語能力の指標と考えられるMLUは場面による変動は少なかったが,MLTは場面による変動が大きく,それぞれの場面での談話の性質を反映するものと考えられた。来年度は,このトランスクリプトデータに基づいてさらに談話の能力の発達過程と,その際の家族からの言語入力の役割を分析する予定である。
|