研究概要 |
平成10年度はβAPP695△K670N/M71Lトランスジェニックマウス(Tg2576)の経時的変化を中心に検討した。このマウスではWestern blotでfull βAPPとC末断片の有意の増加を認めた。血漿中Aβ40は26 pmoles/ml,Aβ42は4pmoles/mlと高値であった。脳内でAβ40は26pmols/g brain,Aβ42は13pmols/g brainで、老人斑の沈着とともに著明な増加を示した。免疫細胞化学的検討では、15か月齢マウスの大脳皮質では典型的およびびまん性老人斑がAβ1(Ab9204)および42断端特異抗体(S42)で染色された。Aβ40断端特異抗体(S40)は老人斑のアミロイドコアのみを染色した。皮質内血管壁にはamyloid angiopathyの所見も認められた。βAPPのC末端抗体では神経細胞の胞体が染色され,蛋白発現は良好であった。 老人斑周囲のdystrophic neuriteも染色された。このdystrophic neuriteは抗Tau抗体でも染色された。以上のことから、このマウスではAlzheimer病脳で見られるびまん性老人斑、典型的老人斑、amyloid angiopathyが再現され、dystrophic neuritesにβAPP,Tauの蓄積が認められた。しかし、大型錐体細胞における神経原線維変化は認められなかった。さらにアミロイドβ蛋白沈着におけるApolipoprotein E4の効果を検討するために、これらのマウスとラットApoE(ヒトE4に相当)を過剰発現するTgを交配させ、βAPP(+)ApoE(+),βAPP(+)ApoE(-),βAPP(-)ApoE(+),βAPP(-)ApoE(-)のmiceを作成している。
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