研究概要 |
脳内アミロイドβ蛋白(Aβ)沈着におけるApolipoprotein E4(ApoE4)の効果を明らかにする目的で、記憶学習障害・脳内にAβ沈着を認めるβAPP過剰発現トランスジェニックマウス(Tg)(Tg2576)にラットApoE(ヒトE4に相当)を過剰発現するTgを交配させ、βAPP(+)ApoE(+),βAPP(+)ApoE(-)のTgを作成した。4,8,12カ月齢のTg脳で神経病理学的検索とsandwich ELISA法による脳内(および血漿中)Aβ40,42の定量を行い、2群間で比較検討した。Transgeneは尾の抽出DNAを用いてPCR法により検出した。ApoE(+)Tgでは35KDのラットApoE蛋白が主に肝・腎および血漿中に発現していた。4カ月齢ではApoE(+),ApoE(-)Tgともに脳内にAβ沈着は見られなかった。8カ月齢ではともに大脳皮質、海馬、嗅脳に典型的老人斑が認められたが、明らかな差はなかった。12カ月齢ではともに典型的老人斑に加え、び慢性老人斑と脳表、皮質内小血管にAmyloid angiopathyが認められ,その程度はApoE(+)Tgで顕著であった。脳内Aβ40,42は4カ月齢ではともに少量で、8カ月齢では約10倍に増加していたが2群間で差はなかった。12カ月齢ではApoE(+)TgでAβ40は37nmol/g,Aβ42は13nmol/g,ApoE(-)TgでAβ40は33nmol/g,Aβ42は8nmol/gであり、ApoE(+)TgでAβ40,42ともに増加していた。血漿中ではApoE(+)TgでAβ40は24pmol/ml,Aβ42は1pmol/ml,ApoE(-)TgでAβ40は17pmol/ml,Aβ42は1pmol/mlであり、ApoE(+)TgでAβが増加していた。以上の結果から、ラットApoEは血漿中Aβ量を増加させるとともに脳内Aβ沈着を促進することが明らかとなった。
|