研究概要 |
本来,生理的にヒト体液内に存在するAβ142が脳に蓄積し,ADを引き起こす機序を明らかにするため,以下の研究をおこなった.Prion-Promoter-βAPP751NL+Iマウスで血液Aβは5,000〜20,000fmol/ml,Aβは2,000〜8,000fmol/mlの高発現系を選択した.新しく確立したPrion-Promoter presenilin-1 M146L,Prion-Promoter presenilin-1 C410Yでも血液Aβ40は300fmol/mlから8000fmol/ml,Aβ42は100から1000fmol/mlに上昇していた.今後,脳の検索を行う予定である.正常ヒト血液Aβの加齢に伴う変化は,若年者と高齢者で上昇していた.ヒト血液中の総Aβ量は正常対照とアルツハイマー病患者で差はみられなかったが,リポタンパク非結合型Aβ42は有意に上昇していた.日内・季節変動はなかった.脳脊髄液Aβ40,Aβ42,Tauを測定し,アルツハイマー病(AD)の生物学的なマーカーを確立した.合計338例(AD患者が119例,正常対照73例,AD以外の痴呆疾患49例,その他の神経疾患97例)で検討した.TauはAD群で有意に上昇し,MMSE,FASTと相関した.Aβ40は有意な差はなく,Aβ42はAD群で有意に早期から低下していた.TauとAβ ratio(Aβ40/Aβ42)の積(ADIndex)を用いると,AD群で有意な上昇がみられた(p<0.01).診断感度は77%,特異性は79%であった.平均20ヶ月間経過を追うとに診断感度は97%に改善し,臨床的にも十分使用可能であった.正常ヒト対照脳ではAβは微量であったが,26例のではnmol/g程度のAβ蓄積が確認され,老人斑優位例ではAβ42,アミロイドアンギオパチー例ではAβ40が増加していた.全身臓器のAβは微量であった.ヒト尿でAβ40を同定した.
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