脳の老化:βアミロイド沈着から痴呆発症までの病態

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10832004
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 山口 晴保 群馬大学, 医学部, 教授 (00158114)
• 研究分担者: 杉原 志朗 群馬県立がんセンター, 病理部, 部長 ; 佐藤 久美子 群馬大学, 医学部, 教授 (80008268)
• キーワード: アミロイドーβ / アルツハイマー病 / 老人斑 / ブレインバンク / βタンパク

研究概要

脳老化の過程で、細胞外腔へのβアミロイド沈着から神経細胞内リン酸化タウ蓄積を生じて痴呆発症に至る変化を捉えるため、以下の研究を行った。
中年期の剖検脳を引き続き集め、Gunma Senile Brain Bankは合計110例の凍結脳組織を有するに至った。これらの脳組織から、前頭葉ではβアミロイド沈着が多量になって初めてリン酸化タウ蓄積が始まることや、中年期のβアミロイド沈着もアルツハイマー型痴呆と同様ApoE4遺伝子型によって加速されることを示した。
また、βアミロイド沈着初期の詳細な超微形態を捉えるために、通常のオスミウム固定エポン包理超薄切片で免疫電顕を行い、細胞形質膜表面にβアミロイド沈着が開始し、これが種となって時間経過とともに細胞外腔にアミロイド線維が形成されることを示した。この電顕所見を得るにあたっては、超薄切片をスライドグラスに載せて免疫染色(金染色銀増感)を行い、上から当てた光の反射を観察する新技技術であるリフレクションコントラスト顕微鏡を用いた。
また、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血の脳でのβアミロイド沈着を詳細に検討し,加齢で老人斑の形態が変化することを示した。

研究成果

• [文献書誌] Maot-Schieman M LC,et al: "Age-related ploque morphology and c-terminal heterogeneity of Aβin Dutch type hereditary cerebral homorrhage with amyloidosis"Acta Neuropathol.. (In press). (2000)
• [文献書誌] Fakla I,et al: "Expression of amyloid precursor protein,synaptophysin and presenilin-1 in the different areas of the developing cerebellum of rat"Neurochemistry International. 36. 143-151 (2000)
• [文献書誌] Kasa P,et al: "Human amyloid-β1-42 applied in vivo inhibits the fast axoral transport of protein in the sciatic nerve of rat"Neurosci Lett.. 278. 117-119 (2000)
• [文献書誌] Natte R,et al: "Ulta-structural evidence of early non-fibrillar Aβ42 in the capiltary basement membrane of patients with hereditary cerebral hemorrhage with amyloidosis,Dutch type"Acta Neuropathol.. 98. 577-582 (1999)
• [文献書誌] Enya M,et al: "Appearance of sodium dodecyl sulfate-stable amyloid β-protein(Aβ)dimer in the cortex during aging"Am.J.Pathol. 154. 271-279 (1999)
• [文献書誌] Ishiguro K,et al: "Phosphorylated tau in human cerebro-spinal fluid is a diagnostic marker for Alzheimer's disease"Neurosci Lett.. 270. 91-94 (1999)
• [文献書誌] 山口晴保: "新臨床医のための分子医学シリーズ アルツハイマー病の新しい展開 アルツハイマー型痴呆の神経病理"羊土社. (1999)
• [文献書誌] 山口晴保: "臨床精神医学講座12巻 老人斑の病理"中山書店(印刷中). (2000)