脳の老化:βアミロイド沈着から痴呆発症までの病態

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10832004
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 山口 晴保 群馬大学, 医学部, 教授 (00158114)
• 研究分担者: 杉原 志朗 群馬県立がんセンター病理部, 部長 ; 佐藤 久美子 群馬大学, 医学部, 教授
• キーワード: アミロイド-β / アルツハイマー病 / 老人斑 / ブレインバンフ / βタンパク

研究概要

脳老化の過程で、細胞外腔へのβアミロイド沈着から神経細胞内リン酸化タウ蓄積を生じて痴呆発症に至る変化を捉えるため、以下の研究を行った。
βアミロイドの沈着初期像を検討するためには、アルツハイマー型痴呆よりも40代〜60代の非痴呆老人脳が優れている。そこで、これまで収集した脳に加え、中年期の剖検脳を引き続き集め、Gunma Senile Brain Bankは合計110例の非痴呆中年〜老年者の凍結脳組織を有するに至った。これらの脳組織の免疫組織化学的検索を行い、βアミロイド沈着の程度やタウ蓄積の程度を半定量化すると同時に、ギ酸でβ蛋白を抽出し、ELISA法でβ蛋白をAβx-40とAβx-42の分子種に分けて定量した。また、凍結組織よりDNAを抽出し、ApoE遺伝子型を決めた。この結果、前頭葉ではβアミロイド沈着が多量になって初めてリン酸化タウ蓄積が始まることを示した。またApoE遺伝子型の解析から、ApoE4遺伝子型がβアミロイド沈着開始時期を早めることを示した。
さらに、アルツハイマー型痴呆脳において、βアミロイド沈着初期の超微形態を免疫電顕で捉え、形質膜表面の一部でβアミロイド沈着がはじまることを示した。このような膜分画として、flotillinに富む膜分画の重要性を指摘した。

研究成果

• [文献書誌] Yamaguchi H. et al: "Amyloid β protein (Aβ) starts to deposit as plasma membrane-bound form in diffuse plaques of brains."J Neuropathol Exp Neurol. 59. 723-732 (2000)
• [文献書誌] Morishima-Kawashima M et al: "Effect of apolipoprotein E allele ε4 on the initial phase of amyloid β protein accumulation in the human brain."Am J Pathol. 157. 2093-2099 (2000)
• [文献書誌] Thal DR, et al: "Amyloid β-protein (Aβ) -containing astrocytes are located preferentially near N-terminal-truncated Aβ."Acta Neuro pathol. 100. 608-617 (2000)
• [文献書誌] Kokubo H, et al: "Localization of flotillins in human brain and their accumulation with the progression of Alzheimer's disease."Neurosci Lett. 2010. 93-96 (2000)
• [文献書誌] Kasa P, et al: "human amyloid-β1-42 applied in Vivo inhibits the fast axonal transport of proteins in the sciatic nerve of rat."Neurosci Leff. 278. 117-119 (2000)
• [文献書誌] Maat-Schieman ML, et al: "Age-related plague morphology and C-Terninal heterogeneity of amyloid β in Dutch-type hereditary cerebral hemorrhag"Acta Nevropathol. 99. 409-419 (2000)
• [文献書誌] 山口晴保: "臨床精神医学講座S9卷フルツハイマー病"中山書店. 490 (2001)