加齢に伴う胸腺萎縮のメカニズムの解析するために 1)ラットに高周波熱破壊による視床下部前方部位破壊実験;(1)ラットの年齢にかかわらず視床下部前方部位破壊群では胸腺肥大を生じ、長期にわたり対照群より胸腺重量は重かった。(2)胸腺肥大を生じた視床下部前方部位破壊群の血清中成長ホルモン(GH)量は対照群に比較し有意に高値を示した。 2)加齢に伴う血清中成長ホルモン量の測定;ラット、マウスともに新生仔の時期に非常に高い値を示し、その後1ヶ月齢以降老齢期にいたるまで成長ホルモンは低値を示した。 これらの事より、胸腺萎縮が成長ホルモンの血中濃度と関連していることが確認された。この成長ホルモンの下垂体からの分泌は視床下部によりコントロールされており、GHを上昇させる促進中枢としてGH放出ホルモン、逆に抑える制御中枢としてGH放出抑制ホルモンがある。 3)視床下部、下垂体におけるホルモンおよびホルモン受容体のRNA発現量の検索;(1)視床下部におけるGH放出ホルモンの発現量は新生仔期より加齢に伴い減少し、一方でGH放出抑制ホルモンの発現量は上昇する。(2)下垂体ではGH放出ホルモン受容体の発現量が老齢期で低下する一方で放出抑制ホルモン受容体の上昇がみられた。 これらの事から新生仔の時期には促進中枢の機能が優位になり成長ホルモンが大量に分泌されるが、新生仔期を過ぎると抑制中枢が優位になりGHの分泌が低くなる加齢に伴う変化が認められた。 加齢に伴う胸腺萎縮が視床下部によりコントロールされていおり、視床下部からの下垂体における成長ホルモン分泌を制御するGH放出ホルモンとGH放出抑制ホルモンの分泌のバランスが加齢に伴い変化することが胸腺萎縮のメカニズムと考えられる。
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