活性酸素が老化の一因であることを実証するために、線虫の一種c.エレガンスより酸素に高い感受性を示す突然変異体(mev)を分離した。その中でも酸素濃度に比例して著しい寿命短縮を示すmev-1の解析を行った。本年度の成果は: 1. 老化のマーカーの1つである酸化タンパク質を測定した。 野生株でも年を経るにしたがって酸化タンパク質の蓄積されていくが、mev-1ではその速度は野生株よりも早かった。高い酸素濃度下ではその速度はさらに加速した。酸化ストレスに強く長寿命突然変異体であage-1はそれとは逆に、酸化タンパク質の蓄積速度が遅く、高い酸素濃度下でも蓄積速度は上がらなかった。2. mev-1の遺伝子クローニングに成功し、生化学的解析をおこなった。 mev-1の原因遺伝子はミトコンドリアの内膜に存在する電子伝達系である複合体II夏のサブユニットの1つであるシトクロームb560であることを突き止めた。この遺伝子の71番目のアミノ酸がグリシンからmev-1ではグルタミン酸に置換しており、mev-1に野生型のこの遺伝子を導入すると、酸素感受性、寿命ともに野生株と同じレベルまで回復した。 複合体の機能の1つであるコハク酸脱水素酵素としての役割は正常であったが、複合体IIとしての活性は野生株の20%以下であった。シトクロームbが従来知られているコハク酸脱水素酵素をミトコンドリア内膜に結合する役目の他に、電子伝達にも重要な役割を果たしていることを初めて明らかにした。
|