研究課題/領域番号 |
10832011
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研究機関 | (財)東京都老人総合研究所 |
研究代表者 |
清水 孝彦 財団法人 東京都老人総合研究所, 分子遺伝学部門, 研究員 (40301791)
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研究分担者 |
白澤 卓二 財団法人 東京都老人総合研究所, 分子遺伝学部門, 室長 (80226323)
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キーワード | イソアスパラギン酸 / アミロイドβ蛋白質 / アルツハイマー病 / 血管アミロイド / 老人斑 / 凝集 / 異性化 / アミロイド繊維 |
研究概要 |
老人斑の主要成分は凝集化したアミロイドβ蛋白質(Aβ)である。Aβは3個(1、7および23番目)のアスパラギン酸(Asp)残基を有する。1番目と7番目のAspの多くはイソアスパラギン酸(isoAsp)に異性化していることが知られている。本研究ではAβの凝集化と異性化の関係を調べるために、7番目または23番目のAspをisoAspに置換したAβ1-42(isoAsp7)とAβ1-42(isoAsp23)を化学合成し、異性化Aβ(1-42)の凝集性を比較した。さらに異性化Aβを特異的に認識する抗体(抗isoAsp7抗体と抗isoAsp23抗体)を作製し、アルツハイマー病(AD)患者脳での異性化Aβの存在様式を調べた。 合成異性化Aβ1-42の試験管内での凝集性はチオフラビンT蛍光定量、円二色性分散測定および電子顕微鏡で調べた。Aβ1-42(isoAsp23)がAβ1-42とAβ1-42(isoAsp7)に比べて高い蛍光、高いβシート含量および強い繊維形成能を有していた。これらの結果からAsp残基の異性化がAβの繊維形成に重要な役割を担っていることが強く示唆された。9例のAD患者脳の免疫組織化学染色の結果、いずれも抗isoAsp7抗体と抗isoAsp23抗体に陽性であった。抗isoAsp7抗体はすべての老人斑と血管アミロイドを染色することを確認した.一方、抗isoAsp23抗体は血管アミロイドと老人斑のcoreを特徴的に染色することが判明した。本研究でAβ(isoAsp23)の存在が初めて確認された。異性化Aβがすべての老人斑と血管アミロイドに存在することから、異性化がアミロイド形成に積極的に関与すると考えられる。また高い凝集能を持つAβ(isoAsp23)が血管アミロイドに特徴的に存在することは血管アミロイド形成と老人斑形成の機構が異なる可能性を示すもので興味深い。
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