1.ヒト1型糖尿病の発症におけるFas、Fas-ligand(Fas-L)系の関与の検討 ヒト1型糖尿病の発症におけるFas、Fas-ligand系の関与を検討するために、発症早期の1型糖尿病患者より同意のもとで腹腔鏡下に膵X組織を採取し免疫組織化学的に検討した。検討を行った患者13人中、6人で膵X島へのリンパ球浸潤など膵X島炎の所見を認めた。膵X島炎の認められた標本では膵Xβ細胞および膵X島浸潤細胞にFasの発現を認めた。膵X島細胞でのFasの発現はβ細胞で高頻度に認められた。一方、Fas-Lの発現は浸潤細胞でのみ認められた。また、浸潤細胞で最も頻度の高かったものはCD8陽性T細胞であった。膵X島炎の認められなかった症例では、Fas、Fas-Lの発現は認められなかった。以上より、1型糖尿病の発症に対して、Fas、Fas-L系の発現が膵X島炎の発症とその後のβ細胞破壊に関与している可能性が示唆された。 2.ヒト膵X組織および膵X島細胞腫におけるBetacellulin発現の検討 ヒト膵X組織および膵X島細胞腫におけるBetacellulin発現を免疫組織化学的に検討した。その結果、Betacellulinは成人ではα細胞、膵X管細胞とβ細胞に発現しているのに対して、胎児では未分化な膵X管細胞で強い発現が見られることが明らかとなった。またインスリノーマ細胞、グリカゴノーマ細胞ともにBetacellulinの発現が認められた。これらはBetacellulinが膵X島の増殖、分化に重要であることを示唆するものである。 3.1型糖尿病の新たな病型に関する検討 1型糖尿病患者について、その発症様式、検査所見、免疫学的異常などを比較検討したところ、急激な発症、血清膵X酵素の上昇を認め糖尿病関連自己抗体が検出されない一群の患者の存在を認めたので、新たな病型として提案した。
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