申請者らは1996年、標的細胞に結合すると同時に、細胞傷害性リンパ球に活性化シグナルを伝達する新しいヒトの接着分子、DNAM-1を見い出し、その構造と細胞傷害性リンパ球における機能を明らかにした。DNAM-1は細胞傷害性リンパ球のみならず、ヘルパーTリンパ球、gdT細胞、単球など広範にわたる免疫担当細胞、さらに血小板にも構成的に強く発現しており、種々の免疫反応や止血機構に重要な役割を担っていることが推測される。しかし、その機能についてはin vitroの実験による細胞障害性リンパ球における役割以外には明確になっていない。本研究では、DNAM-1の機能を、分子、細胞および個体レベルで解析することを目的とした。 はじめにDNAM-1ノックアウトマウスを作製するために、マウスDNAM-1のcDNAの単離を試みた。マウスT細胞ライブラリーを作製し、ヒトDNAM-1cDNAをプローブとしてスクリーニングしたが、成功しなかった。そこでヒトDNAM-1cDNA配列をもとにPCR法でマウスDNAM-1のcDNA、genomicDNAの単離を試みたが、これも成功しなかった。一方、同様の方法でブタDNAM-1のgenomicDNAの単離に成功することができた。現在、ブタの遺伝子配列のもとにマウスDNAM-1ホモログの単離を試みている。 一方、生化学的、遺伝子工学的手法を用いて、DNAM-1が白血球に発現する接着分子LFA-1と会合し、両者が機能的に複合体として機能していることを明らかにした。
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