研究課題
従来セーフガード措置は、先進国によって発動されることが多く、ガット発足後に発動されたセーフガード措置の大部分は、オーストラリア、米国、ECそしてカナダによるものであった。ところが、WTO発足後の事例を見ると、米国は依然として多いものの、インド、韓国、アルゼンチン、ブラジルなど、発展途上国あるいは新興工業国による発動が多く見られるようになっている。ウルグアイ・ラウンドにおいては、初めて発展途上国が交渉に実質的参加をしたといわれているが、そうした中で、発展途上国の中にも従来の保護主義的貿易政策を変更し、輸入既成の撤廃や関税の大幅な引下げなど自由化を進める国が出てきている。WTO発足後の事例の多くが発展途上国によるものであるという事実は、そうした動きを実証するものでもある。そうした状況の中で、平成10年度の研究は、WTO体制における各国のセーフガード制度について、主に発展途上国を中心に検討した。その前提として、まず、WTOにおける発展途上国の位置づけについて検討した。そこでは、発展途上国における債務危機移行の自由化の中で、主に新興工業国の間でガット時代の非相互主義と特別待遇の要求が必ずしも自国の利益となるものではなく、ガット多角的体制の強化の必要性を認識し始めたことが、それらの国々のウルグアイ・ラウンドへの積極的参加をもたらしたことを明確にした(柳論文)。ウルグアイ・ラウンドへの積極的参加は、それらの国の輸入自由化をもたらし、その結果、それらの国内産業は厳しい輸入競争に直面することになる。そのため、発展途上国におけるセーフガード措置の発動が増加しているわけであるが、セーフガード制度ならびにその運用が適切でなければ、自由化の実質は崩れるが、インド、韓国等の事例を見る限りでは、適切なものといえる。
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