研究課題/領域番号 |
10834003
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
間宮 勇 明治大学, 法学部, 助教授 (00202333)
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研究分担者 |
宮野 洋一 中央大学, 法学部, 教授 (30146998)
辻 健児 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (70037068)
柳 赫秀 横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 教授 (90220516)
森田 章夫 東京都立大学, 法学部, 教授 (30239652)
高田 映 東海大学, 法学部, 助教授 (70216654)
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キーワード | WTO / 自由貿易 / 輸入規制措置 / セーフガード / アンチダンピング / GATT / 国内産業保護 |
研究概要 |
平成12年度は、前年度に引き続き、WTO体制下における国内制度検討の一環として、台湾のアンチ・ダンピング制度の検討を行った。台湾は、GATTの原加盟国であったが、1950年に脱退した。その後、国連での代表権を失い、国際政治の上では孤立していたが、経済的にはアジアNIEsの一つとして、経済発展を遂げてきた。1990年にGATTへの加盟申請を行ったが、中国のWTO加盟と関連付けられ、中国の加盟の直後に加盟が認められることになっている。現在、台湾は、WTO加盟を前提に通商法規の改正を行っている。昨年の検討対象となったインドと同様に、台湾でも近年アンチ・ダンピング措置の発動が増加しており、その制度と運用に関心が集まっている。台湾の現行制度は、ほぼ東京ラウンド協定に沿った規定となっており、WTO加盟後は、WTO協定にあわせて改正された新規則が施行されることになっている。規定の上での抵触はないものの、運用においては、価格比較や損害認定において若干の問題を抱えている。しかし、WTO加盟後は、政府間協議や紛争処理手続、国内の行政不服審査等によって運用の是正は可能と思われる。 さらに本年度は、これまでの国内制度検討を踏まえ、WTO体制における各国の輸入制限措置の貿易自由化に対して有する意義を検討した。従来から、先進国に多く見られたセーフガードやアンチダンピングなどの輸入救済措置は、貿易の自由化が進むにつれて増大してきたが、現在、発展途上国にも同様の傾向が見られるようになっている。90年代のアジアにおける経済危機を契機として、アジアの発展途上国も開放政策を採用するようになり、大幅な関税引き下げが達成されているが、それに比例するように輸入救済措置の発動が増加している。このような状況は、ある意味では、矛盾した態度とも見えるが、WTO/GATT体制における貿易自由化の性格を反映しているものである。つまり、WTOにおける貿易自由化は、各国の自律的国民経済の維持を前提としながら進められているものであり、無条件に国際分業体制を実現することを目指しているわけではない。しかし、自由化が進められることにより、相互依存関係の深化が進み、自律的経済の維持も困難になっているのが現状である。ウルグアイラウンドによって大幅な自由化が進められた後、シアトルの閣僚会議は新ラウンドの立ち上げに失敗した。現在、従来とは異なる新たな自由化の枠組みが必要とされているといえる。
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