液晶ディスプレイ(LCD)は画面を見る角度、つまり観視方位角が正面を0度として、大きくなるにつれてその画質が劣化する。この現象は一般に、LCDの視野角特性として知られ、これを改善するために多くの努力が払われている。この視野角特性の要因として、中間調再現特性、色再現範囲やコントラストの変化、黒反転現象などが挙げられる。しかし現在、LCDの視野角の定義には、実質的にコントラストのみが使われており、他の画質劣化要因については定義されていない。このようなLCDの視野角の定義方法は不適切であり、この定義は総合画質に基づいて行われるべきである。そこで、本研究では、中間調再現特性、コントラスト、色変化、黒反転現象の4つを考慮に入れた、新しい視野角の定義方法を提案する。 今研究期間中、これらの画質劣化要因を総合的に評価した視野角の評価方式を定義するため、主要な3つの方式のLCD(TN方式、IPS方式、MVA方式)の観視方位角に対する光学特性を測定した。また、昨年度に求めた単独画質評価値から、劣化量加算モデルにより、総合画質評価値を算出した。さらに、この評価式の妥当性を検証するため、LCDの表示画像に対し観視方位角を変化させて、主観評価実験を行った。 LCDの視野角の計算結果は、ISP方式とMVA方式では計算値より実測値の方が大きく、実際の視野角の方が広くなったが、TN方式で主観評価実験による実測値と計算値が近い値となった。本評価方式は、まだ改善の余地は残されているが、表示デバイスの光学特性のみで画質の実用限界、許容限界を求めることの可能性を示し、従来のコントラストのみを考慮したLCDの視野角の評価方式より有益なものになることを示唆した。
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