研究概要 |
【目的】:色覚刺激が生体に及ぼす効果を調べるため、色の三属性である色相、輝度、彩度を変化させた色覚刺激および無彩色刺激を提示して、1)覚醒レベルおよび2)作業記憶に及ぼす効果を検討した。 【方法】:1)正常男女大学生を被験者とし、SD法を用いて色に対する嗜好性およびイメージを調べた。その後、色相(赤、黄、緑、青)、彩度、輝度の異なる有彩色および無彩色に対する単純反応時間を測定した。2)正常男女成人22名の被験者は、顎のせ台を使用して頭部を固定し,刺激提示用CRT中央部の注視点を注視した。色相(赤:635nm,黄:580nm,緑:548nm,青:463nm)、彩度(40〜60%)、輝度(5〜10cd.m-2)の異なる視角3゚の色刺激を無彩色背景(23.6cd.m-2)上に提示した。実験1では明るさが一定で、色相、彩度の異なる15種類の刺激(有彩色12種:色相4種x彩度3段階、無彩色3種:輝度3段階)のいずれか1つを標本刺激として3秒間提示後、3秒間の遅延時間をおいて提示される3個の比較刺激中から、標本刺激を選択した。比較刺激の色相は標本刺激と同一で、彩度、輝度を変数とした。実験2では、比較刺激のみを実験1と同じ手続きで提示した。 【結果】:1)反応時間は有彩色が無彩色に比べて速かった。有彩色では赤、緑に対する反応時間が速く、青では遅い傾向が得られた。SD法による色の嗜好性との相関は認められなかった。2)色の作業記憶は、色相が緑の場合に正答率が高く(50%)、青では低く(7%)、無彩色では最も低かった(6%)。3)比較刺激間の弁別は緑で低く(50%)、青で高かった(89%)ことから、記憶実験の結果は弁別の困難さの相違によるものではないことが明らかとなった。 【結論】:以上の結果は色相により覚醒レベルおよび作業記憶に及ぼす効果が異なることを示唆している。
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