研究概要 |
平成11年度に実施した事項と得られた知見を以下に示す。 1.個人特性の相違による地域景観評価構造の比較分析 地域景観に対する心理的評価構造における評価者の個人特性による影響を検討するため,既に実施した日本,中国,英国の被験者に対して国内外河川景観24種をスライド呈示し評価を求める実験結果を再検討した。すなわち,水面や空,建物といった景観構成要素が景観中に占める面積比を景観の物理的指標として,心理的評価との関連性について3国間で比較した。その結果,「建て込み」や「緑量」など具体的な内容を示す個別的評価では,物理的指標の影響はほぼ共通するが,景観全体の印象に関する総体的評価では,自然や人工物の総量による影響が大きい日本,中国に対し,英国では極めて人工的な景観が高く評価されるなど差異が認められた。このことは,景観に対する客観的な認識の段階は共通するが,情報が統合され総体的な評価が下されるプロセスは個人特性によって相違する可能性のあることを示唆している。 2.個人特性の相違による地域景観に対する注視特性の比較分析 日本人大学生を被験者として前年度に実施した,アイカメラによる眼球運動測定に併せて心理的評価を求める実験を,中国人留学生30名を対象に1999年12月に同様に実施し,両者の比較を行った。その結果,日本に比べ中国では,景観を呈示した30秒間の注視点数が多いが,注視点の平面的な散らばりは少なく景観中央部に集中する傾向がみられた。しかし,近景,中景,遠景の位置や,それら要素の内容による差異については概ね傾向が共通し,日本,中国の注視特性が大きく相違しないことを把握した。また,注視点の平面的散らばりの程度が景観呈示直後の5秒間は日本と中国でほぼ同等であることから,認知の初期段階の反応は個人特性によらずほぼ共通し,その後に差異が現れることが示唆された。
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