本年度は、音と映像の刺激作成と印象評定実験の準備のために、音と映像の時間的な同期、非同期が、音と映像の主観的調和感にどのような影響を及ぼすのかを求める、予備的な印象評定実験を行った。映像刺激はコンピュータグラフィックスによって制作した。音楽刺激は、MIDI制御のコンピュータ音楽である。音楽の拍節的なアクセントが明確な条件と不明確な条件として、リズムセクションが付けられた条件とメロディだけの場合とを設けた。映像の動きのアクセントが明確な場合として球体が正方形運動をするもの、不明確な条件として球体が円運動をするものを利用した。映像の動きに明確なアクセントがある場合、音楽の拍節的なアクセントと映像の動きが同期していると、主観的な調和感が上昇する。映像の動きに明確なアクセントがない場合には、音楽の拍節的なアクセントと映像の動きの同期、非同期は、それほど主観的な調和感に影響を及ぼさない。同時に、映像の動きのアクセント周期が音楽の拍節的アクセント周期よりも短い場合の方が、短い場合よりも、調和度は低い傾向も示された。音と映像の主観的調和には、両者のテンポの一致という側面も重要であるようだ。また、拍節的アクセントを明確にするためにリズムセクションを付加した場合、メロディだけの場合よりも、主観的調和感は高い。特に、映像の動きのアクセント周期が音楽の拍節アクセントの周期より短い場合、この傾向は顕著である。本年度の予備的実験を通して、刺激作成、評定実験手続きのノウハウを確立した。
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