テキスタルデザインにおける、人間の視覚的な感性情報を客観的に評価し、その評価値を用いた感性繊維製品の設計を可能とすることを目的としている。織物における視覚的な感性情報を「織物の表情」として捉え、各種の主観的評価を実施した。まず、「〜らしさ」に関してアフォーダンスを調べたところ、素材感としてのアフォーダンスである「綿らしさ」や「麻らしさ」および「手紬らしさ」などが、綿糸および麻糸などの見かけの糸形状から得られたフラクタル次元と相関をもつことを明らかにした。そこで、フラクタル次元から糸形状を再現し「〜らしさ」の感性を創造する手法を開発し、さらに、その形状を基に綿紡績機を制御することで、「麻らしさ」や「手紬らしさ」などのアフォーダンスをもつ綿糸の製造を可能とした。このようにして製造した綿糸から綿ジャケット等を試作したところ、素材の物生は綿そのものの肌にやさしい感性でありながら、見た感性では「麻らしい」という評価が得られた。また、「手紬らしさ」を有する紡績糸の開発にも成功した。このことは、見た感性と触れた感性を分離し、再構築することで新しい感性を持つ繊維製品が誕生したことを意味している。 これらの成果の一部は学会等で発表し、新聞によっても報道された。
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