本研究では、色彩・模様・形状・部品など、対象(画像・物体)の特徴付けに複数の要因があるような複雑な場合における、感性の工学的モデル化、および、このモデルを利用したデータベースの内容検索・検索結果のコーディネーション等のアルゴリズムの研究を行う。 本年度は4年計画の初年度に当たり、複雑な対象物に対する主観的評価基準のモデル化の研究を進めた。 対象としては、複数のパーツ部品から構成される家具などの立体物を選び、物体の構造や利用者の主観的な基準に基づく内容検索(例示検索・類似検索)のアルゴリズムの開発と評価を行った。 対象のデータには、バーチャルリアリティ分野で広く採用されている物体のポリゴンのVRML形式による記述を採用し、頂点の空間的な分布密度などの特徴を数量化することで、物体の分類、類別を可能にした。 例えば典型的なイスを、複数のパーツ部品を組み合わせて構成し、全体をキーとして例示検索すると、建物、乗り物、人体、オブジェ等の多様な物体を含むデータベースからイスだけを効率良く網羅的に検索することができた。 また、データべースから少数のサンプルとなる物体群を用いて、それらの主観的な類似度を教示するだけで、その利用者の着眼点、類別の仕方などの主観的な評価基準を構築するアルゴリズムの研究を進めた。多次元尺度法等による統計的な学習アルゴリズムにより、一人ひとりの利用者ごとに、着眼点をモデル化した主観的な評価空間を構成した。各利用者の感性モデルに基づいて検索すると異なった検索結果が得られたが、事後評価により、各利用者の感性と適合した結果となっていることを確かめた。 本年度はさらに、家具データから構成されるデータベースからの検索結果を仮想空間上に対話的、また、半自動的に配置し、オフィスなどの複数の物体から構成される3次元空間をコーディネイトするためのインタフェース開発も進めた。
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