バーチャル・プロダクトの使い心地(主として圧覚によるもの)を評価できるバーチャル・ヒューマンを構築することが本研究の目的で、そのコンセプトの検証のため、具体的に「椅子の座り心地を評価するバーチャル・ヒューマン」を構築し、その可能性を検討する。今年度は、立位での人体(今回の場合は臀部)形状データを作成し、そこから座位での人体(臀部)形状変化を忠実に表現することの検討を行った。 標準的人体形状や個別人体形状の取り込みには非接触3次元形状測定装置(ミノルタ製VIVID700)を用い、3方向からの形状を測定し、マージして、3次元CGシステム(Softimage)に取り込む。今回は、立位での臀部形状を被験者5人について取り込み、同時に座位での臀部形状も検証用に取り込んだ。 立位での臀部形状から、Softimageのスケルトン・モデルを用いて、座位での臀部形状を作成すると、検証用に取り込んだ実測結果と一致しない。この問題の解決方法には、臀部での筋肉構成を忠実にモデル化したアナトミー・ベースド・モデルを作成する必要があるが、それを用いての変形シミュレーションには計算機負荷がかなり大きくなる。そこで、まず同等の変形結果を示す「CG的な仕掛け」として、「複数スケルトン・モデル」と呼ぶものを構築した。それを用いて、座位での臀部形状変化を検証した結果、実用的に可能なモデルであることが確認できた。 同時に、正攻法であるアナトミー・ベースド・モデルの構築も試みた。この形状モデルを用いて、それをフィジカル・ベースド・モデルとし、動作に伴う変形をシミュレーションで求めるとなると、人体(各筋肉)の材料特性値が必要となる。その材料特性のモデル化と測定法についても検討を行い、見通しを得た。
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