コンピュータ内にモデル化したバーチャル・ヒューマンによって、設計開発対象のバーチャル・プロダクトの使い心地(主として圧覚・痛覚によるもの)を評価させることを試みるのが本研究の目的で、椅子の座り心地評価などを具体応用例として取り組んだ。人体各部を均一な超弾性体(ムーニィモデル)とし、対象物との接触変形FEMでシミュレーションして、得られる荷重分布やひずみ値と心地との関係を求め、使い心地を評価させる。初年度は、立位での人体形状データを作成し、そこからの動作に伴う人体形状の変化を表現する仕掛けを開発した。二年目は、人体各部の変形シミュレーション手法の確立(精度の検証)とその変形解析に必要な人体各部の特性値を求める手法の確立、さらには解析結果として得られる荷重分布やひずみ値と心地との関係づけの手法の確立を行った。 変形解析に必要な人体各部の特性値を求める手法としては、アスカーC_2型かたさ試験機を用い、そのかたさ値とムーニィ定数を関係付ける方法を提案し、実際に人体各部のムーニィ定数のデータベースを作成した。椅子の座り心地については、まず椅子と臀部との接触面での荷重分布を実測し、シミュレーション結果が実務的に有用なレベルで一致することを検証した。ついで、荷重分布の勾配値を座り心地と関連させる手法を提案し、検証結果を示した。また、前腕部にバッグの紐をかけ、どの程度のバッグの重さで、どのような痛みを感じるのかの試みも行った。このような痛み評価のために、3段階の痛みレベルを決め、それと人体各部での変形に伴うひずみ値との関係をデータベースとして作成した。 本研究結果は、介護ロボットが被介護者を適切に扱うためのシミュレーションなどに応用可能である。
|