研究概要 |
1998年6月と10月に沖縄県瀬底島付近の海域において船上よりプランクトンを採取した。試料中出現した放散虫は18属22種であり,このうち8属8種に共生藻がいることを確認した。確認には通常の光学顕微鏡観察に加え落射型蛍光顕微鏡を用いたが,後者により葉緑体の自家蛍光を観察することにより直径5μm以下の共生藻についても確実に存在を確認することができた。また,有孔雀虫はGlobigerina bulloidesが普通に見られた。同海域および瀬底島沿岸から採取した珪藻については,現在31属50分類群の珪藻を同定しているが,最終的にはさらに分類群数が増える予定である。200個体の放散虫および有孔虫を単離し,骨格および殻を切断し,内部共生藻をピペット操作で取り出し培養を試みた。その結果6試料から藻類が増殖した(うち,放散虫から単離・培養した3試料は恒温器の故障により藻体が死滅し,観察不能となった)。1種はSpumellaria目の群体形成種であるShaerozoum fuscumに共生していた中心珪藻Minulocellus polymorphaである。培養後に形成された被殻は殻の直径1.5〜4μm,帯面長4〜6μmであった。その形態を電子顕微鏡により詳細に観察した。また培養株中に初めて観察された増大胞子は繭形(約10x3.8μm)をしており,側生型であった。また,有孔虫Globigerina bulloidesから単離された藻類についてはTLC分析および透過型電子顕微鏡観察により,Nannochloropsis oculataであることがわかった。また,もう一種については有孔虫から単離され,最近になって増殖が確認されたものであるが,増殖が遅いため,現在,同定できるほど充分な個体数まで増えていない。また,共生藻の放散虫細胞内におけるTEM観察では宿主の珪酸質骨格が切片作製時に障害となるが,本年度はフッ化水素処理によりそれを除去する方法を確立することができた。
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