研究概要 |
イネ科の一年生草本でコムギの近縁野生種である.エギロプス属シトプシス節(Aeqlops section Sitopsis)の5種を対象に,自然集団での遺伝的多様性を遺伝子および染色体構造の両面から明らかにすることを目的としている。これらは地中海の東岸地域に分布し,使用するサンプルはイスラエルおよびエジプトの自生地から収集したものである。具体的には,アロザイムを使って遺伝子の変異を明らかにするとともに,染色体構造では雑種の染色体対合・C-バンディング・数種のDNAプローブを用いたFISH(蛍光 in situ hybridization)などのうち,適切な手法を選んで実験をおこなう。今年度得られた結果は以下のとおりである。 1) 植物では約10種の酵素がアロザイムの観察に広く利用されているが,酵素数を増やすためそれら以外の約20酵素についてエギロプスで利用できるかどうか検討した。全体で26酵素が利用可能であったが,研究を効率よく行うためそのうち18酵素を使うことに決定した。 2) 今回のサンプルでもっとも大きな割合を占めるAe.longissima18集団,約650個体のアロザイムを観察し,イスラエルの海岸部の集団では変異が多いが,内陸部ではほとんど変異が見られないという結果を得た。現地での観察結果と気候条件などから,内陸部での変異の少なさは生育条件の厳しさと対応していると考えられる。 3) 染色体構造では,適切な手法を選択するために雑種の染色体対合・C-バンディング・数種のDNAプローブを用いたFISHなどの予備実験をおこない,検討を加えている段階である。
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