研究概要 |
環形動物の細胞外ヘモグロビン(Hb)は分子質量が3.5MDaに及ぶ超分子である。本研究では、この巨大Hbのサブユニット構成を明らかにするとともに、グロビン鎖(a,A,b,B)とリンカーとの間には糖鎖接着があるとする我々の仮説を検証することを主な目的としている。本年度の主な結果は以下の通りである。 1.アオゴカイHbの各サブユニットの分子質量をTOF-MSにより決定するともに、グロビン鎖の12量体の単離に成功し、サブユニット構成を"12{3(a・A-b-B)3/2L_2}"と推定した。また、グロビン鎖のアミノ酸配列を決定し、2系統あることを確認した。ハイドロパシー・プロフィールからグロビン鎖の遠位His(E7)が分子の表面に出ていることを予測した(後藤寿夫・森由美子・倉林陽子・村上聡、日本動物学会中四国支部会、広島市、2000.5.20-21)。 2.環形動物巨大Hbの内部に埋もれているグロビン鎖のサブ構造体の質量をESI-Tof-MSにより直接測定して、サブユニット構成を"12{3(a・A-b-B)3L}"と推定した(Green,B.N.,Gotoh,T.,et al.,J.Mol.Biol.に投稿中)。 3.アオゴカイとツリミミズのHbは硫化水素を結合しないが、深海の生物アルビネラやチューブワームのHbは硫化水素を結合することを発見した。分子構造を比較して、フリーのSH基をもつCys残基に硫化水素が結合することを確定した。巨大HbのフリーのSHには2つの役割があり、硫化水素に対する解毒と共生細菌への硫化水素の運搬である(Zal,F.,Bailly,X.,Gotoh,T.,et al.,XIIth International Conference on Invertebrate O_2 Binding Proteins.pp20-21.Roscoff, France, July24-28,2000)。
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