研究課題/領域番号 |
10836016
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山口 裕文 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 教授 (20112542)
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研究分担者 |
西野 貴子 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (20264822)
副島 顕子 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (00244674)
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キーワード | ヒエ属 / 適応進化 / 遺伝的多様性 / 栽培化 |
研究概要 |
ヒエ属植物18分類群30系統について葉緑体DNAのtrnTとtrnLおよびtrnLとtrnF遺伝子間のスペーサー領域およびtrnLのイントロン領域についてシーケンスを決定し、それに基づいて合意系統樹を作成した。また、RAPD変異分析、アイソザイム分析、ITS領域のSSCP分析により得られた変異を種の違いや地理的生態的違いと関連ずけて解析考察した。分析した葉緑体DNAのスペーサー領域は長さ823から857および310から334bpであり、イントロンは長さ581から586bpであった。タイヌビエとイヌビエおよびタイ産のE.stagninaのクレード、ヒエ及びイヌビエを主とするクレード、コヒメビエとインドビエのクレードが明瞭に識別され、それらは1から3箇所のインデルおよび1から6箇所の塩基置換によって特徴づけられた。タイヌビエのC型、F型、非脱粒型、栽培型、穂擬態型は、1個の塩基置換が種内変異として認められたものの、共通したクレードに属した。イヌビエの変種、ヒメタイヌビエ、ヒメイヌビエは、栽培ヒエ、麗江ヒエ、E.oryzoidesは全く同じ塩基配列を示し、南米産のイヌビエには一個の置換が見られた。ヒメイヌビエとインドビエは全く同じ配列を示し、南米のヒメイヌビエは一個の塩基置換を示した。これらの結果は、藪野による交配親和性の分析結果を強く支持した。RAPD分析とアイソザイムによる分析結果と合わせると、ヒエ属植物は生態的適応の以前に大きな種群の分化を完了しており、複二倍体化による跳躍的種分化はすべて一回のみと推定された。耕地雑草に顕著に見られる擬態性、難脱粒性はそれぞれ苗の選別と稗抜き作業、打ち付け脱穀への適応として種の違いを越えて進化したと推定され、3種の生物学的種に1回ずつ起きた栽培化は、すべての栽培種に非脱粒性、非休眠性、植物体の大型化をもたらしたが、擬態化に伴って起こる特徴と異質の変化を示すことから、ヒエ属の栽培種は2次作物としての進化とは結論づけられない。 成果を含んだ解説記事を2冊の書籍に掲載するとともに成果報告書と学術論文とを作成している。
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