研究課題/領域番号 |
10836020
|
研究機関 | 東京都立短期大学 |
研究代表者 |
浅見 崇比呂 東京都立短期大学, 健康栄養学科, 助教授 (10222598)
|
研究分担者 |
黒田 玲子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90186552)
加藤 雅也 西海区水産研究所, 石垣支所, 主任研究官
|
キーワード | 左右性 / 左右軸 / 形態形成 / 適応度 / 形の法則 / 系統的制約 / 発生的制約 / 巻貝 |
研究概要 |
オナジマイマイの左右巻型変異系統を用い、両親を共有するきょうだいの右巻と左巻の間で、成体の殻の形態を比較した。左右巻型間で殻径と殻高を比較したところ、平均値は統計的に有意には異ならなかった。しかし、親の効果は有意であった。すなわち、親が異なると殻径あるいは殻高が有意に異なることが明らかとなった。殻高を殻径で割ることにより殻の形を標準化して、きょうだいの右巻と左巻の間で比較したところ、統計的に有意に左巻個体の殻は背が低いこと、すなわち相対的に殻が平たいことが明らかとなった。これは、遺伝的背景が非常に類似するきょうだい個体であっても、左巻に成長するか右巻に成長するかによって成体の形態が変わることを示している。 この左と右の間での殻の形態の差異は、ミゾマイマイを用いてJohnson(1987)が巻型遺伝子の効果により説明できることを示している。すなわち、この種では左巻が右巻に対して遺伝的に優性であるが、この左巻遺伝子の殻の形態形成に対する効果は遅滞遺伝せず、通常の発現をして殻径を広げる。したがって、右巻に成長するか左巻に成長するかに関わらず、左巻遺伝子を母親もしくは父親から受け取っているかぎり、受け取らなかった個体の平均値よりも殻は幅広くなる。しかし、本研究で用いたオナジマイマイの左右巻型は、巻型遺伝子についてはまったく同一のきょうだい個体である。それもの左と右の間で、殻の形が統計的に有意に異なっていた。これは、発生過程での左右軸逆転それ自体が形態形成のプロセスに、統計的に検出可能な程度で変化をもたらすことを証明した世界で初めての例である。
|