昨年度に引き続き、ホメオボックス遺伝子の重複が生物の形態の多様化に与えた影響を明らかにするために研究を進めた。本年度は、昨年度研究をおこなったPAX遺伝子群の進化学的研究にあわせて、PAX6遺伝子の下流に発現することが知られているSIX遺伝子群の分子進化学的な研究をおこなった。SIX遺伝子群はホメオボックスドメインをもつ転写制御遺伝子のひとつとして知られており、3つのサブファミリーに分類される。PAX6遺伝子の下流で発現し眼の初期発生に重要な役割を持つとともに、筋肉の分化にも大きな役割を持つこと力ζ知られている。本年度は、このSIX遺伝子の起源とその機能分化の関係を分子進化学的な立場から研究した。解析には国際DNA配列データベース(DDBJ)より入手した配列に加えて、共同研究によって決定されたショウジョウバエとプラナリアのSIX遺伝子をもちいた。解析の結果、SIXにみられる3つのサブファミリーは多細胞生物の進化のはやい段階で重複を起こしていることがあきらかとなった。また、無脊椎動物と脊椎動物の両方でSIX遺伝子は眼、筋肉の分化に関わっているが、その各々のサブファミリーと関係する組織の関係が逆転していることが明らかになった。これは、両者の分岐以降転写を活性化する遺伝子を独立に逆転したことが示唆された(投稿中)。また、更に、眼の多様化に焦点を絞り、プラナリアの眼における発現遺伝子の解析をおこない、その他の種(ショウジョウバエ、マウス、ヒト)におけるそれとの比較解析をすすめた。本目的に基づいて、従来の遺伝子配列を用いた比較解析方法と異なる発現遺伝子の種類と量をもとに比較を行うための方法の開発をすすめた。さらに、各生物種の眼における発現遺伝子のテータの収集をすすめた。
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