本研究課題において我々は、生命誕生以来35億年間に生物が獲得してきた多様性を進化遺伝学的な視点から解明することを目標とした。特にヒトをはじめ様々なゲノム配列の全貌が明らかになっている現在、こういったゲノム配列を用いた多様性解析はまさに時期を得た研究である。 平成10年度には、ヒトをはじめとする真核生物ゲノム中で重複領域の検出を行った。検出精度向上のために、重複領域候補を統計的に制限する方法を新たに開発し、結果としてヒトで74、酵母で59、線虫で197の重複領域を視覚的に表示できる形でインターネットを通じて公開されている。また、重複が生物進化に与えた影響を知るために重複年代の推定を行った。 平成11年度は、ヒトMHC領域の解析を詳細に進め、新規に決定した配列中で大規模重複領域を発見するとともにその領域の重複による構造進化過程を再現することができた。また、非コード領域中に非常に高い塩基多様性を示す領域を発見し、ヒッチハイキング効果による影響などを示唆することができた。更に微生物ゲノムにおいては、オペロン構造のように機能的に重要と考えられる領域においても高い構造可塑性を発見し、ゲノム構造の多様性を明らかにすることができた。加えて、GC含量が大きく変化し、ゲノム中の塩基構成が多様化する様子を検出するための方法開発にも成功している。
|