研究概要 |
携帯電話やPHSなどの携帯無線機の普及に伴って,アンテナから放射された電波電力の人体への吸収が問題となっており,無線機を設計する際に吸収電力を定量的に測定しておくことが重要となっている.本研究では,人体モデル及びその近傍に置かれた無線機を固定し,受信アンテナを比較的近い距離で方位角及び仰角方向に回転させて無線機からの電波を受信し,その電力を積分することにより高速・高精度で人体による吸収電力を測定する方法を確立することを第1の目的とした.また,これを利用してより現実に近い人体モデル(ファントム)や実際の無線機匡体上に設けられたアンテナを用いて,電力吸収の少ないアンテナ構造を明らかにすることを目指した. 平成10年度は,まず受信アンテナを方位角及び仰角方向に回転させて基準ダイポールアンテナからの放射電力を測定することにより放射効率を求めると共に,ランダムフィールド法による測定結果と比較した.その結果,例えば1.5GHzでは4%程度の誤差で放射効率を測定できること,ランダムフィールド法に比べて精度が高いことが明らかになった.次に,回転装置を計算機で制御することにより,放射効率測定の自動化を図った.また,COST244(European Cooperation in the field of Scientific and Technical Research)で定められた人体頭部のファントムを用いて近傍のダイポールアンテナの放射効率を測定し,FDTD(Finite Difference Time Domain)法による計算結果と比較することにより測定精度の高さを示す共に,立方体ファントムと球ファントムでは人体に吸収される電力が異なることを明らかにした.さらに,携帯電話機匡体に取り付けられたアンテナの種類やその位置を変化させて測定と数値計算を行い,半波長モノポールアンテナが効率の点で優れていることなどを明らかにした.
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