わが国の居住環境のELF(極低周波)電界・磁界特性は未だ十分に定量化されていない。本研究は(1)送電線隣接家屋、(2)配電線隣接家屋、(3)階下あるいは隣接して屋内変電所がある家屋、(4)電力設備に近接していない通常の家屋、等における電界・磁界特性の解析を行い、それら諸特性の定量化のための基礎データを与えることを目的としている。また、これとあわせて、電界・磁界と人体のカップリングのモデル解析を行い、体内に誘導される電流の密度特性を検討している。 平成10年度の研究成果は次の通りである。 (1) 購入した2台の曝露量計EMDEX MATEの性能を研究室の既設の3次元ヘルムホルツコイルを用いてチェックした。このメータは0.5秒毎にサンプリングした曝露磁界の平均値とその標準偏差、最大値、計測時間を表示するようになっているので、便利である。同時に使用するEMDEX IIについてもチェックを行った。 (2) 本研究では屋内の電界を直接、計測する代りに、人体誘導電流に着目して間接的に電界特性を定量化することを提案している。この計測を可能にするアナログデータ光伝送システムを完成させた。このような研究指針について米国オハイオ州立大学のSebo教授と討論した。高調波の計測の重要性の指摘があった。 (3) 配電線の不平衡負荷電流の取り扱いを検討し、対称座標法が適用できることが分かった。 (4) 人体と電界・磁界とのカップリングの定量化を行い、論文にまとめた。今後は電界と磁界が同時に存在する場合の取り扱いを検討する必要がある。
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