1.低周波交流磁界の生体作用として明らかにされている磁気閃光現象に着目し、変動磁界によって人体頭部内に誘導される電磁密度の大きさと分布を明らかにし、過去に報告された実験からの推定値に理論的な根拠を与えた。また、網膜内の電流分布と知覚される閃光感覚に類似性が認められることを明らかにした。 2.交流式電機シェーバー使用時の頭部および網膜内の誘導電流密度の解析を行い、このような局所的に強い磁界であっても、通常の使用状態では頭部内の誘導電流密度が防護指針の範囲内にあることを定量的に明らかにした。 3.交流磁界曝露実験おいて実験動物内に誘導される電流密度を明らかにするため、ラットの解剖学的不均質を考慮したモデル(セル数270万)を用い、ラット内の誘導電流分布について解析した。特に、メラトニン分泌の調節に関係があると考えられている松果体と網膜を流れる磁界による誘導電流密度に着目し、回転円磁界によってラット内に生じる誘導電解および誘導電流の大きさと向きを明らかにして直接磁界の場合と比較した。計算結果より、回転円磁界に固有の作用を調べるのに適した曝磁方法の提案を本計算結果に基いて行った。 4.人体前身モデルを用い、交流外部磁界により誘導される電流密度の分布を調べ、実験動物との比較を行った。この結果から、メラトニン分泌の抑制がラットで観察されてヒトでは観察されにくい理由が誘導電流分布の違いによって説明できる可能性が示唆された。さらにこの結果から、動物実験の結果を人体の場合に外挿する際に必要な、誘導電流密度に関するスケーリングファクターを初めて明らかにした。
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