交流強電界の中でも微弱な生体信号が計測可能な、脳波用および心電図用テレメータを新たに開発した。厚生省の認可を受け安全性の確認されている理学診療用の電界曝露装置を用いて、人体にELF(Extreamly Low Frequency)電界を曝露したときの脳波、心電図、血圧を各種テレメータを用いて同時計測し、解析を行った。 心電図より得た心拍変動の平均および標準偏差の解析評価、交感神経、副交感神経活動の指標となるHFおよびLF/HFの解析評価などを行った結果、電界暴露に伴って副交感神経活動が弱まり、交感神経活動が活性化され、体温調節に関係する部位も少し活性化されるという初期データを得た。同時に計測した手甲部体温は電界暴露中より低下する傾向があり、電界暴露により皮膚交感神経が働いて皮膚血流を減少させたためであることが推定された。しかしながら、血圧変化および血圧差変化には電界暴露前後で目立った変化は観測されなかった。 人体の電界曝露に伴なう自発脳波を計測し、δ波、θ波、α波、β波のスペクトルパワーの変化を評価し、覚醒水準の推移の評価、α波の1/f揺らぎ解析による快適性変化の評価などを行った。その結果、電界暴露後に主に脳波低周波成分が増加して、覚醒度が下がる結果が得られた。しかし、この結果が単に閉眼状態で長時間椅子に座っていることによるものかどうか調べるために、同条件で電界暴露をせずに計測を行った結果、覚醒度が下がる結果にはならず、電界暴露が覚醒度を下げていることが明らかとなった。また、強電界を暴露すると、体毛が振動して被験者に感知され、心理的影響が作用した可能性がある。これを検証するため、70dbのホワイトノイズ音と揺らぎのある風を被験者に与えて同様に実験した結果、電界暴露中は覚醒度があがる傾向があり、暴露後には元の水準に戻ることが明らかになった。しかし、風を与える条件は被験者の体温を奪うことにもなったので、暴露後に覚醒度が下がる方向にならなかったものと考えられる。
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