研究概要 |
電解曝露に伴なう人の脳波を計測してスペクトル変化を解析し,覚醒水準の評価などを行った。その結果、電解曝露後には振幅指標で覚醒度が下がる結果が得られた。しかしこの結果が単に長時間閉眼安静を保つことによるものか調べるために、同条件で電解曝露をせずに計測を行った結果、覚醒度は下がらなかった。従って電解曝露が覚醒度を下げていることが明らかとなった。 また電解曝露ににより体毛が振動して被験者に感知され、心理的影響が作用した可能性がある。これを確かめる為、揺らぎ風を被験者に与えて体毛振動の感触を奪い、さらに眠気防止の為に雑音を提示して実験した結果、電解曝露中は覚醒度があがり、曝露後には元の水準に戻る結果となった。しかし風を与える条件は結果的に被験者の体温を奪う事にもなったので覚醒度が上昇して曝露後に覚醒度が下がる方向にならなかったものと考えられる。 次に電解曝露に伴なう手甲皮膚温度、心電図および血圧を計測して解析した。皮膚温度は電解曝露直前まで上昇傾向であったものが、曝露開始とともに低下傾向に転じ、曝露後には一段と低下傾向が強まる結果となった。この時の心電図を基に交感神経、副交感神経活動の解析を行った結果、電解曝露に伴って副交感神経活動が弱まり、交感神経活動が活性化され、体温調節部位も活性化される結果となった。しかし血圧および血圧変化には電解曝露前後で変化は観測されなかった。 最後に皮膚温度の低下現象は局所的な末梢応答が関与するかどうかを調べる目的で腕の局所曝露を行い、その時の皮膚温度、筋電図、脈波を同時計測して解析を行った。その結果、皮膚温度の低下減少は特定の被験者では電界強度が非常に高い場合に見られる場合もある事が分かった。そのときの筋電図活動は皮膚温度の推移と無相関であった。しかし皮膚温度の低下現象も個人差が大きく、さらに大規模で詳細な検討が必要と考えられる結果となった。
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