電磁界の細胞への影響を検討するために、細胞増殖・ミトコンドリアエネルギー活性・細胞形状に着目し検討した。用いた細胞は、癌化神経芽細胞(NG108-15株)で、細胞は接着細胞である。ある程度の接着強度が得られるが、水流を与えるとディッシュからはがれ、トリプシン処理を必要としないため、擾乱を最小限にとどめられるという利点がある。培養環境は、DME培地・FBS8%・L-グルタミン・HAT添加の培地を用い、温度37[℃]・CO_2濃度5[%]一定で培養した。刺激は静磁界を用い、永久磁石より発生させ、磁界強度は、20〜200[mT]とした。 1. 静磁界曝露における細胞増殖度測定と形状観察 静磁界連続刺激で、実験期間を9日間とし、顕微鏡による細胞数検定と形状観察を行った。複数回の測定を行った結果、磁界強度40[mT]付近で、細胞増殖度はcontrol群の約2倍大きかった。他の磁界強度では、control群の誤差範囲に埋もれた曲線が得られたが、増殖度曲線が安定せず、磁界の影響と思われる面が測定によりわかった。また、細胞形状観察では、control群よりも磁界曝露群の方が側枝の発達が良く、磁界曝露群では、細胞骨格が盛り上がっており、細胞周期が異なっている部分が多いことが観察された。 2. MTT法を用いた細胞活性の測定 無血清同調法により細胞周期をそろえた場合とそろえない場合のMTT法によるミトコンドリアエネルギー活性の測定を行った。実験時間は9時間とし、その間は連続刺激を行った。細胞周期をそろえない場合には、有意な結果が得られなかったが、そろえた場合には、ミトコンドリア活性の周期のずれを観測した。 以上を検討すると、細胞に対する電磁界の影響の一部は、ミトコンドリア部分に関係があり、特にミトコンドリア活性に関係していると考えられる。エネルギー活性の変化が細胞増殖や骨格などの形状にも影響を与えていると考察された。
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