平成10年度は、うつ症状に効果があるといわれている経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)の安全性について正常マウスを用いて検討し、臨床応用への可能性について検討した。rTMSを10Hz、100回投与群と3Hz、180回投与群とrTMS非投与群の3群に分け、各群に刺激閾値の130%、90%の2種類の刺激強度で磁気刺激を行い、学習・記憶能への影響について検討した。学習.記憶能の検討には、Morris水迷路試験を用いた。結果は、rTMS投与した群では、一過性に影響がみられるものの、記憶の保持には影響はみられなかった。また、実験中にけいれんがみられたマウスはいなかった。rTMSは、磁気刺激の強度、頻度、回数、一連の反復刺激を繰り返す回数を検討することにより、安全に臨床応用が行なうことができると考えられた。 平成11年度は、健常者に反復磁気刺激を行ない、臨床応用について検討した。上腕二頭筋を磁気刺激し、筋収縮パターンを記録し、収縮時間、弛緩半減時間を測定した。次に、50Hz、0.5秒間の反復磁気刺激を行ない、強縮性収縮を起こさせ、その前後にて単収縮を行なった時の筋収縮パターンにおける張力の変化について検討した。結果は、男性では出力50%の時に張力比は最大に達し、女性では出力70%の時に最大に達した。収縮時間では男女差はみられなかったが、弛緩半減時間では女性の方が有位に長く、これは、slow twitsh unitとfast twitch unitの比率が男女間で差が見られるためと考えられた。強縮性収縮前後での単収縮の張力比は、男女ともに反復磁気刺激後において単収縮の張力は増大していたが、これは男性においてより増大傾向であった。この現象は、Post-tetanic potentiationを示していると考えられた。連続磁気刺激は、ヒトの近位筋の生理学的解析に有用な方法であり、臨床応用に発展させることができると考えられた。
|