研究概要 |
経頭蓋的高頻度磁気刺激(rTMS)法の安全性を検討する目的で,マウスにrTMSを与えて行動学的に分析した。 対象・方法:32匹の正常マウスと31匹のcytosine arabinoside注射したCrj:ICR雄マウスにて実験を行った。マウスに生後2-4日の3日間cytosine arabinosideを50mg/kg1日1回注射し2・3週間後には頻回に転倒する運動失調マウスを得る。それらを3群に分け,週5回3週間にわたり,運動皮質刺激閾値130%の強度でrTMSを施行した。A群(正常11匹,失調マウス10匹)では,1回の刺激で10Hz刺激を10秒間与えた。B群(正常11匹,失調マウス10匹)では,3Hzを60秒間与えた。C群(正常10匹,失調マウス11匹)には磁気刺激を与えなかった。第1回目の運動観察は,磁気刺激を与える直前の第8週令で観察した。第2回目の運動観察は,11-TMS終了後の11週令で,第3回目の運動観察は,rTMS終了後2週間後の13週令で行った。オープンフィールド法は,1cm異なる方向へ移動した場合1カウントとし,その総和を運動回数とし,転倒率は,転倒回数を運動回数で除した値とした。 結果:失調群は対照群に比べ有意に運動回数が低下した(p<0.05)。rTMSは対照群でも失調群でもこの動作点数に影響しなかった。転倒率は,失調・対照群とも経時的に減少した。特に,失調A群(10Hz×10秒)では,平均36%の転倒率で,磁気刺激をしない失調C群(59%)に比べ有意の低下を示した(p<0.05)。この差違は,13週目(刺激終了2週間後)までの長期効果を認めなかった。また,B群(3Hz×60秒)の磁気刺激頻度が少ない場合は,刺激時間が6倍と長いにも関わらず,非刺激C群との差違を認めなかった。 以上の結果,失調マウスに対する経頭蓋的高頻度磁気刺激の治療効果を認めたが,この刺激条件ですべての観察期間を通じて,意識障害や痙彎などの異常を認めなかった。
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