身体運動の腎機能に及ぼす影響を明らかにし、腎機能障害における運動療法を開発するために、(1)運動の水・電解質代謝に及ぼす影響、(2)運動時の水・電解質代謝と尿中過酸化水素排泄量の変化について検討した。 (1) 運動の水・電解質代謝に及ぼす影響 健常人に等張性運動と抵抗運動を負荷した際に、抵抗運動では、血中カテコールアミンの上昇が著明であり、ANPやBNPの増加は見られなかった。それに伴い、循環血漿が低下し、さらに抗利尿ホルモンの増加も著しく、尿量は減少し、ナトリウム排泄量も減少することが明らかとなった。以上の結果から、水・電解質反応から見て等張性運動が望ましいことが明らかとなった。 (2) 運動時の水・電解質代謝と尿中過酸化水素排泄量の変化 心拍数モニター下の40%、80%強度の等張性運動負荷時および食塩負荷時の尿中過酸化水素の排泄量を1-^<14>C-α-ketoglutaric acidを用いたVarma法によって測定した。その結果、尿中過酸化水素とナトリウム排泄量とは高い正の相関を示し、80%強度の運動負荷では、尿量及びナトリウムの排泄が明らかに低下していた。 以上の結果から、全身の循環反応面からみると、中等度の等張性運動が望ましいと考えられる。一方、強い強度の等張性運動では循環血漿量の減少に伴う腎血流量の減少があるが、尿中過酸化水素とナトリウム排泄量ともに減少していたことは、腎のエネルギー代謝に対する影響は少ないことを示唆した。
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