筋組織の再生とは、筋管細胞の分化・増殖を意味する。しかし、in vivoにおける筋管細胞の形成の微小環境についてはほとんど研究されていない。この研究では、ウイスター系ラットの腓腹筋内に、線維芽細胞増殖因子、IV型コラーゲン、ラミニンをコーティングした多孔性構造物であるポリビニール・アルコール製のスポンジ(厚さ1mm、幅1mm、長さ6mm)埋め込み、3日、7日、2週、3週および4週後に摘出した。取り出したスポンジの内に侵入し、分化した筋管細胞の出現度数を検討した。 その結果、線維芽細胞増殖因子、IV型コラーゲン、ラミニンのいずれを用いても間葉系細胞の移動は促進されたが、筋管細胞は形成されなかった。 筋組織の修復には、筋芽細胞の損傷部位への移動、増殖が必要であろう。したがいスポンジに上記のような増殖因子をコーティングしてやれば細胞遊走の促進となり、筋細胞の前駆細胞の分化に有効な環境、すなわち筋管細胞の形成が促進されると考えた。しかし、スポンジ内には線維芽細胞やマクロファージなどの間葉系細胞が多数集簇していたが、筋管細胞は形成されなかった。引き続き平成11年度は、運動療法により筋管細胞の形成能がどのように変化するのかを検索する予定である。 また、副腎皮質ステロイドのような、線維芽細胞やマクロファージの機能を抑制する薬物が筋組織の再生に有効に作用するのではないかと考えている。平成11年度には、これを用いることにより筋管細胞の分化時間の短縮になるか否かを検討する予定である。
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