筋組織修復中の運動療法の役割を検討し、組織変性後の早期からの運動は、食細胞の遊走、あるいは浸潤能に障害を与え、再生機能に悪影響をおよぼす可能性を否定し、筋形成にかかわる前駆細胞である筋衛星細胞の活性化と増殖を促し、筋組織の再生が亢進されることを証明した。続いて運動療法中の筋細胞の再生に対し、微小環境がどのような役割を担っているのかを検討するため、ポリビニールアルコール製のスポンジをラット腓腹筋に埋め込み、走運動を行った。スポンジは線維芽細胞増殖因子、IV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンでcoatingし、スポンジ内に進入した筋管細胞の出現を指標に検討した。その結果、筋管細胞は間葉系細胞の遊走を促進し、線維芽細胞やマクロファージなどが集まっているような場所では形成されず、これらの細胞の機能を抑制するような環境が筋再生にとって有効と思われる。コラーゲンやフィブロネクチンが存在すると、筋管細胞の遊走と増殖は盛んになり、筋芽細胞の分化に手がかりを与える物質として重要であると思われる。ラミニンは、筋芽細胞の増殖は刺激されず、強い線維芽細胞の増殖作用が認められた。筋管細胞が形成された周辺には中程度の血管の形成が認められたが、筋管細胞は必ずしも血管と接してはいなかった。 以上のことより、運動療法は筋細胞の再生を促した。その際、コラーゲンやフィブロネクチンが存在すると、筋管細胞の発現の頻度が一層上昇し、より筋再生は亢進するものと思われる。また、運動にともなう血流の上昇は、筋再生には必ずしも必要な条件ではないと考えられる。
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